風の旅人 第31号 第32号

vol.31 2008年4月

定価 ¥1,200(税込)
全150ページ 30×23cm

 

 

【 表紙・裏表紙 】

望月通陽

【 写真 】

  • 白い荒野 津軽

    photos・text / 小島一郎

  • 水の時と命

    photos・text / 高橋宣之

  • 明日をつくる人

    photos・text / 奥山淳志

  • 島の時間

    photos・text / 山下恒夫

  • 東京〜天国

    photos・text / 有元伸也

【 文章 】

  • 【連載】電気の働きに満ちた宇宙!? 第1回

    text / マイケル・グッドスピード他

  • その島へ、この海を越えて

    text / 管啓次郎

  • 歴史との相克

    text / 酒井健

  • 物の道徳

    text / 前田英樹

  • 狭間に生きる

    text / 森達也

  • 北朝鮮の日常 ①

    photos / 石任生 text / 安海龍

  • 新グレートジャーニー ④
    「ベルホヤンスク山脈の野生羊猟」

    photos・text / 関野吉晴

  • 死のカード

    text / 田口ランディ

  • 映像の時間と現実

    text / 小栗康平

  • あわい ①

    photos・text / 小林紀晴

  • 37年目のレッド・ツェッペリン

    text / 保坂和志

  • 今、ここから全ての場所へ

    text / 茂木健一郎

 

FIND the ROOT 永遠の現在 時と命

貧しいとか、そうでないとか、便利とか、そうでないとか、楽しいとか、そうでないとか、様々な分別によって「時」を分断するのではなく、この宇宙そのものが、打ち寄せては返す波のように、繰り返し繰り返し継続してきた命の営みを見つめ直したい。

私たちが生きているこの一瞬には、様々な「時」が多層に織りなしている。その多層な時は、自分が意識しようがしまいが、自分に働きかけている。この一瞬には、「私の時」だけでなく、「私以前の人間が引き継いできた時」や、人間以前から続いてきた「生き物たちの時」や、生き物たち以前から連なってきた「宇宙の時」が重なっている。この一瞬を生きることは、どの「時」も分離することはできず、全ての多層な時の波が重なり合い、反発したり増幅したり打ち消し合ったりしながら、自ずから整えられた状態を生きていることだろう。

 

 私たちは、今この瞬間に影響を与えている「過去」から、今この瞬間の影響を受けていく「未来」まで含んだ「時間全体」の中の一瞬一瞬を、不可逆的な波となって、複雑精妙な関係性のなかで様々な影響を受けたり与えたりしながら生きています。すなわちこの一瞬の営みは、どんなものでも未来に対して何らかの揺らぎと影響を与えていく可能性を秘めたものです。しかし、今日の社会で教えられることは、私たち一人一人の営みとは関係なく遠い昔に「時間の始まり」があって、それが「終わり」に向かって進んでおり、その予め定められた直線的な時間の中に個々の営みが位置づけられているという概念です。
 私たちは、本来、様々な関係の波を受けて次の波に伝える波の一つであるはずなのですが、現代社会の時間概念によって、波間に浮かび不安定に揺らぐ小舟のようなイメージを与えられています。しかし、この世界は何一つ予め定められていたり直線的に固定できるものはなく、常に流動的に乱れ非線形に変化していきます。その流動状態のなかで、一人一人のリアリティにそって、一人一人が生きる「時」や「場所」が生じ、それらの「時」や「場所」が寄せ集まり、互いに影響し合い、せめぎ合い、全体としてなるべくして整えられた波となって、うねうねと伝わっていきます。
 一人一人は、波間に浮かぶ小舟ではなく、波そのものとして互いの相補関係のなかで生きている。そうした感覚がリアルになり、それに基づいて行動することが自然になると、「時」や「場所」や「生命」に対する考えが相転移を起こすのかもしれません。

 

雑誌『風の旅人』編集長 佐伯 剛

 



vol.32 2008年6月

定価 ¥1,200(税込)
全146ページ 30×23cm

 

 

【 表紙・裏表紙 】

望月通陽

【 写真 】

  • サクラ

    photos / 新正卓

  • 流氷の海

    photos・text / 水越武

  • 内なる時

    photos / 進藤万里子

  • 東京渦

    photos・text / 内山英明

  • 極北の時の廻り

    photos・text / 八木清

【 文章 】

  • 【連載】電気の働きに満ちた宇宙!? 第2回

    text / マイケル・グッドスピード他

  • アウトサイダーアートー迷宮の謎ー

    text / 田口ランディ

  • 桜、花、はじまり、小さな光

    text / 管啓次郎

  • 見ることの奥行き

    text / 小栗康平

  • 「個」を抹殺する「論理」

    text / 森達也

  • 日本の龍(上)ー諏訪の龍ー

    photos・text / 若林純

  • 死への意識

    text / 酒井健

  • 炊(かしぎ)の煙

    text / 前田英樹

  • 北朝鮮の日常 ②

    photos・text / 石任生

  • 新グレートジャーニー 
    「シベリア先住民との出会い」

    photos・text / 関野吉晴

 

FIND the ROOT 永遠の現在 時と廻

時は、過去の源流から未来の大海に向かって一直線に流れて終わるのではない。
時は、万物の営みと無関係に淡々と等間隔で針を刻みつけているのではない。
時は、宇宙や、海や、山河や、都市や、私たち自身の中で、複雑精妙に廻り続けている。
それぞれの場で、それぞれの事物と関係し合いながら、渦となって、波となってダイナミックに廻りつづけている。
時が廻るところに事物が引き寄せられ、寄せられた事物が時の廻りを変え、時の廻りが変わることで事物も変わる。
周辺に働きかけたり働きかけられる場を作り出し、その場じたいが新たな場を次々と生み出す力となって、廻りつづけている。

 

 

 時は、過去の源流から未来の大海に向かって一直線に流れて終わるのではなく、また、万物の営みと無関係に淡々と等間隔で針を刻み続けているのではなく、宇宙、海、山河、都市、私たち自身のなかで複雑精妙に廻り続けています。それぞれの場で、それぞれの事物と関係し合いながら、渦となって、波となって。
 時が廻るところに事物が引き寄せられ、寄せられた事物が時の廻りを変え、時の廻りが変わることで事物も変わります。時と事物は、波のように増幅しながら、渦のように収斂しながら、周辺に働きかけたり働きかけられる場を作り出し、その場じたいが新たな場を次々と生み出す力となって、廻り続けています。

 

雑誌『風の旅人』編集長 佐伯 剛